「…だ……いかないで…」


どうしたというのだろうか。

今日はやけに素直だ。

いつもなら平気なふりをして虚勢を張ってでも俺を行かせるというのに。




「私が眠るまででいいから。お願い…」

「分かった」


潤んだ瞳で見つめられ、しぶしぶ承諾する。

端からエレナの“お願い”を断ることなど出来ない事は分かっていた。

高ぶる熱を理性で押さえながらエレナの体を抱き上げ、後ろから抱き込んでベッドに横になった。



「これでいいか?」


そうは聞いたものの、実際のところこれが限界だった。

内心ヒヤヒヤしていたものの、エレナは満足したらしく、俺の手に自分の手を絡ませ、抱き込むようにして丸まった。




「手…つめたくて気持ちいい…」


俺の手を頬にあてたエレナは気持ちよさそうにそう呟く。

エレナの頬は焼ける様に熱く、高ぶっていた欲がスッと引いた。

薬でどこまで熱を下げられるか、明日には熱が引くといいが…




「シルバ…」


そんな考え事をしていると、不意にエレナが口を開いた。





「来てくれてありがと…シルバが来てくれて嬉しかった」


何かと思えば悪漢から救った礼を口にしたエレナ。