「久しぶりに顔を出したかと思えば偉く不抜けた顔つきになったじゃないかい」
皮肉たっぷりに浴びせられた声の主を追って視線をやれば、そこには籠を抱えたフェルトが立っていた。
「久しぶりだな」
「全くだ。国王になったかと思えばろくに連絡も寄越さんとは…。わしはお前をそんな親不孝者に育てた覚えはない」
フェルトの小言はもっともだったため、振り払って二階に行くわけにもいかず、仕方なく答える。
「小言は後から聞く。タオルを借りる」
「好きにせい。あとから色々と聞かせてもらうぞ」
フンッと鼻を鳴らしたフェルトに「あぁ」と答え、水に煎じた薬を持って二階に上がった。
久しぶりにフェルトに会い、当然だが数年前に見た姿よりは老けて見えた。
国王になった今でも俺に対しては昔と変わらぬ口ぶりと威勢のいいしゃべり方に懐かしさが込み上げる。
必要最低限の連絡しかしなかったのはフェルトの身を守ることでもあった。
国王になったいきさつがいきさつなだけに敵だけは多くいた。
そんな中で大切なものを守るには自分から切り離すしかなかったのだ。
けれど、エレナは遠ざけることは出来なかった。
俺の傍にいるのは危険だと、エレナを傍に置けば俺の弱みとなり、必ず利用されると頭にあった。
それでもエレナを手離さなかったということは、俺にも家族の様に愛しみ、守り、傍にいたいと思ったからだ。

