葉柄が長く、葉の縁はふぞろいの鋸歯があるそれは解熱に効果のある薬草だ。
しかし要るのは葉ではなく根茎の方だ。
太い根茎に生えた赤褐色の鱗片毛をそぎ落とし、根茎をすり、水で煎じれば解熱薬となる。
薬草の類の知識も昔フェルトに鍛えられただけあって記憶の片隅にあった。
薬のないフェルトの家では薬草だけが頼りだ。
多少薬の生成方法に不安は残るが、この薬草が解熱に効果のあるものであることは確か。
やってみるか……
勝手知ったるフェルトの家の中だ、どこに何があるかは分かっている。
台の下の扉から鍋を取り出し、戸棚の一番下の段からすり鉢を取り出す。
水洗いした根茎をある程度小さく切って行き、すり鉢に入れてすり潰す。
護衛たちは既に食事をする手が止まり、ちらちら様子を伺うように向けていた視線を今では遠慮なく、というよりは俺が台所に立つ姿に目が釘付けというようだった。
けれど、薬をつくることに専念していると不思議と視線は気にならず、扉が開いた音にも気づかなかった。
すり潰した根茎を水で煎じ、薬が出来上がり、思わずフッと笑みが零れ、皆の緊張が和らいだ時だった。

