白銀の女神 紅の王(番外編)



「エレナを着替えさせて髪をかわかしておけ」

「分かりました」


ニーナはもっていた鍋を護衛に預け、侍女を引きつれてすぐさま二階へ上がってくる。

そして、俺はニーナたちに預け、フェルトの家を出た。




馬屋に休ませていた愛馬に跨り、目的のものを求めて森へ続く沿道を走らせる。

着いたのは先ほどまで俺たちがいた場所だった。

そこにはエレナが羽織っていたローブが泥まみれになって転がったままだった。

しかし、目的はそれではない。




ここら辺にあるはずだが……


そう思いながら辺りを歩いていると、草むらの影から木で編み込まれた籠が見えた。

走って行き中を確認すると、それは確かに目的のものだった。

籠とエレナのローブを持ち、再び馬に乗ってフェルトの家まで戻る。





帰りついた頃には土砂降りの雨になっていた…―――

馬を小屋に入れ、籠を持って家の中に入ると、護衛と侍女たちはちょうど食事をしている最中だった。

俺が入るなり立ち上がる護衛たちを手で制し、濡れたまま台所へ向かった。

戸惑いながら座りなおした護衛と侍女は台所へ立つ俺に訝しげな視線を向ける。

皆俺が何をするのか興味津々のようだ。

多少視線が気になるが、俺は持って帰った籠の中身を取り出し、台の上に置く。

台に置かれたそれは森から持ち帰ったのはエレナたちが取った薬草だった。