「おい!」
突然の事に反応が遅れ、倒れるエレナの体を追って咄嗟に膝を折る。
床に倒れる寸前で何とか受け止め、安堵の溜息を吐く。
そしてエレナを横抱きにし、上を向かせて、倒れた原因が分かった。
やはりぶり返したか……
エレナの顔は上気したように赤く、苦しそうに眉を寄せている。
額に触れるとやはり熱があり、薄く開いた口からは熱い息が吐き出されていた。
いくらサウス地区だといえど、この季節にしかも雨の中外にいては風邪もぶり返す。
もしかして完全には治りきっていないうちに森に出たのではないだろうか。
フェルトの家には薬がないため普段からよく森へ入って薬草を取りに行っていた。
大方エレナにも薬草を取らせに行かせたのだろう。
風邪が完治していないが、フェルトに頼まれ、断れずに森に入ったということか。
まずはこの濡れた服を着替えさせない事には布団に入れることも出来ない。
気を失ったエレナを抱き上げ、部屋を出て、階段から一階を覗く。
「ニーナ」
「はい!!」
一階で食事の支度をしていたニーナに声をかけると、すぐに返事が返ってきた。

