それが余りにも可愛く、思わず破顔した。
もう俺の負けでいい。
…が、このままエレナを抱きしめるのは少し悔しい気がしたので意地悪をしてみることにした。
エレナを抱き寄せ、視線を合わせる様に屈んで、額に唇を寄せた。
「ッ……!!」
唇を離すとエレナは真っ赤な顔をして口をパクパクと動かしていた。
予想通りのエレナの反応に満足し、エレナの望み通りその体を抱きしめた。
エレナの体は一瞬強張ったものの、すぐに力は抜け、体を預けてくる。
「俺は怖くないのか?」
抱きすくめてエレナの首筋に頭を埋めたままそう聞くと、エレナが頷いたような気がした。
「シルバだから大丈夫…シルバじゃなきゃいや」
エレナが発した言葉はくぐもって聞き取りづらかったが、確かに俺の耳に届いた。
エレナにしてはやけに素直だな。
だがそんな変化も気にならない程、俺は安堵していた。
「もう…いかないで……」
たどたどしく紡がれた言葉は切なさが入り混じったような声色だった。
「迎えに来てくれて…ありがとう…私も……」
時折息をついて話すエレナに何かおかしいと思ったのもつかの間、突然エレナの体から力が抜け、膝から崩れ落ちた。

