「俺は先にフェルトのところに行く。お前たちはそこの男たちを憲兵へ引き渡せ」
まだ青ざめた表情をしている護衛が半ば放心状態で頭を下げて応じた。
護衛たちの言動から大体の察しがついたであろう男たちは今や冷や汗をかき、地面にひれ伏している。
王族に剣を向けた場合、原則死罪は免れえないが、今回のサウス地区訪問は表向きにされておらず、公にはノース地区で会議になっている。
こちらとしても俺がこのサウス地区にいるという証拠を残したくはないため、憲兵が来る前にここを離れたかった。
エレナを抱いたまま立ち上がり、男たちを見下ろす。
「そこの男」
呼びかけたのはエレナに馬乗りになっていた男だった。
「命拾いしたな。エレナの肌に触れていたらお前を殺していた」
男はガタガタと震えながら地面を向いたまま動かない。
半分冗談、半分本気の言葉を真に受けた男が震える姿に苛立ちも和らぎ、歩き出す。
「それから……」
数歩歩いたところで、ふと思い出した。
「言っておくが、“国王”はただ一人の女に誓いを立てている」
そう言ってエレナの左手の薬指にはめられた指輪に唇を寄せた。
「俺はエレナ以外を妃に迎えるつもりはない」
疑心から確信に変わった男たちの青ざめた表情を後にして、その場を後にした。

