顔を伏せていて定かではなかったが、それは雨ではなかった。
エレナを抱えたまま子供たちの目線に合わせて膝を折ると、子供たちはエレナの前まで走ってきた。
「エレナお姉ちゃん、大丈夫?」
「えぇ…大丈夫。みんなを呼んできてくれたのね、ありがとう」
子供たちの問いかけに気丈にも笑みをつくって応えるエレナ。
しかし、依然として顔色は悪く、無理をして笑顔をつくっているようにしか見えない。
「すまないが、エレナは体調が悪い。今日はエレナを連れて帰ってもいいか?」
エレナが驚いた表情をするが、自分でもこんな言葉が出た事に驚いている。
いつもなら自分よりも目上の者たちにも“伺う”という事さえしない俺が、こんなに幼い子供たちに伺いを立てていた。
それもこれも皆エレナの事を心配する子供たちの気持ちが伝わってきたからだった。
小さな子供だけであの森を抜け、こうして護衛を呼んできた。
雨で濡れた亜麻色の髪や、泥が跳ねて汚れた裾を目の当たりにして無下にできなかったのかもしれない。
あるいはこの胸に灯った愛情にも似た温かな気持ちが答えだろうか。
子供たちは俺の瞳をしっかりと見据えて、ただ頷いた。
エレナを想って身を引いた子供たちの行動に感謝し、口元には自然と笑みが象られる。

