「エレナ様ぁぁぁ!」
その呼び方と焦りようから後ろを振り返らずとも護衛であることは分かる。
「エレナ“様”?」
エレナの素性を知らないのだろう、護衛の呼び声を聞いたブルームが訝しげな声を上げる。
しかし、慌てた護衛が飛び込んできたことでそれは有耶無耶になった。
「貴様!エレナ様から離れろ!」
馬上から降りた護衛は勢いのままにエレナを抱きしめる俺に向かって怒鳴る。
後ろ姿といえど自国の国王を悪漢と見間違えるとはどうなんだとは思ったが、着ている服を見てそれもしょうがないのかもしれないと思った。
ノース地区から城へ戻り、エレナを追ってすぐに城を出ようとした時、ウィルの部下から恰好を指摘された。
普段からウィルの傍にいるからか、ウィルそっくりの口ぶりで「国王がお一人で…」と丁寧な口調でぐちぐちと遠慮なくものをいう臣下たちに、一般市民の恰好を装うことを条件として城を出てきたのだ。
俺と特定できるものは剣のみであり、今はローブの下にあるため、護衛たちが気づかないのは無理ない。

