白銀の女神 紅の王(番外編)




「すげぇ……お前一体何者だ?」

「別に何者でもない」


呆気にとられたブルームの問いに生返事で応え、地面に座り込んだままのエレナの前で膝を折る。

エレナの瞳にはまだ僅かな怯えの色が含まれ、俺の顔を見ようとはしない。

胸の奥でキリ…と小さな痛みが走った。




「エレナ」


呼びかけるとようやく視線を上に持ち上げ、濡れた銀色の瞳と目が合った。

エレナの怯えの原因は分かっているつもりだったからこそ、簡単には手を伸ばせず、触れることも出来ない。




「立てるか?」


そう言ってエレナに手を差し伸べると、エレナは潤んだ瞳を伏せて首を横に振った。




やはりまだ駄目か……

エレナのこの状態を思えば落ち着くまで待ちたいところだが、雨は段々酷くなってきており、病み上がりということもあって体が心配だ。

かといって今は強引に連れて帰るわけにもいかない。