白銀の女神 紅の王(番外編)




剣は飾りではない。

護身用の短剣ではなく、所謂軍事目的につくられている剣はその刀身も長く、重量もそこそこある。

鍛えてもいない素人がこれを自在に操ることは難しく、スピードも遅い。

胸に剣を構えて突き出すことを思いついたまでは良かったが、例え二人が相手だろうと男たちが俺を仕留めることは出来なかったのだ。

ザクッと湿った地面に突き刺さった二つの剣を振り返り、唖然とする男たち。

痺れているであろう手を抑えて怯んだ様子を見れば、既に戦意を喪失していることは明らか。

しかし、ある意味でしぶとい男は飽きもせず口を開いた。




「お、俺たちはサウス地区の貴族の息子だぞ!父上に言ってお前を処分してやる」


その言葉に眉間を寄せて男たちを睨めば、先ほどまでの勢いをゴクリと生唾ごと飲み込んで黙り込んだ。




「親の権力に頼るとは呆れてものも言えんな。こんな馬鹿息子を庇う父親がいるとは思えんが、子が子なら親も親かもしれん」


俺を見る阿呆面に、これ以上話していても無駄であり、こいつらに時間を割くことさえ無意味であると感じた。





「俺を処分したいというならこの先のフェルト・ノーランが住む家に来い。暫くはそこに滞在している」


そう言い残して、エレナの元へ向かった。