「勝ち目はお前たちにあるんだろう?そのお飾りの剣でかかってこい」
「うぉぉッ…!!」
「おい!ッ…クソッ!」
自尊心を砕かれた男は案の定、剣を振り上げ俺に向かって走ってくる。
仲間はその行動に驚いたようで一瞬制止の声を上げるが、走り出した男の勢いに誘発されたのか、一緒になって走ってきた。
剣の構え方、角度、大ぶり且つ無駄なモーションは素人丸出しだ。
貴族は嗜みとして剣術や馬術は習得しているはずだが、この男たちはサボっていたのだろう、まるで滅茶苦茶な動きに構えていることすら阿呆らしくなる。
振り上げた軌道線上のままに振り下りてくる剣を難なくかわし、拳をつくって男の鳩尾に振り上げる。
ドンッと重い一撃に男は呻き声を上げて倒れ、地面にうずくまった。
後ろに続いた二人は地面に倒れた男を見て一瞬怯んだが、剣を胸の前に構えて迫りくる。
なるほど、二人は大振りすればそれだけ不利になることをこの一瞬で学んだようだ。
剣を胸に構えて突き出すモーションは俊敏で無駄がない…が、それは常日頃から鍛錬を積み上げてきた者たちだからこそ出来るもの。
「訂正しよう。剣は飾りなどではなかった」
迫りくる二つの剣が胴体の左側を掠めるのを横目で見ながら体を翻し、真横から突き出された二つの剣を同時に振り上げた。
キーン…――――
剣は簡単に男たちの手から離れ、くるくると回転し、放物線を描きながら後ろに飛んで行った。

