「ほら、手を貸してやるから立て」
「ッ…やっ……」
差し伸べられた手がパンッと払われたことに、ブルームだけでなく俺も、そして当の本人であるエレナも驚いた。
「エレナ?」
「ぁ……ごめんなさい…」
無意識だったのだろう、ブルームの声にエレナは小さく謝る。
瞳は瞬きの度に視点を変え、明らかに動揺している。
身を引いたエレナの体は硬直し、僅かに上がった肩は小さく震えていた。
その姿を目の当たりにして、奥底から湧き上がる怒りに似た感情に思わずギリッ…と奥歯を噛みしめた。
「気が変わった」
俺が馬鹿だった…――――
「すぐに終わらせるからそこで待ってろ。エレナには触れるなよ」
ブルームにそう言って、手に持った剣を持ち直し、エレナに馬乗りになっていた男を解放する。
何故解放されたか分かっていない様子の男は切られてもいない首元を抑えながら離れ、仲間の元へ走った。
「さぁどうする、お前たち。このまま大人しく憲兵に捕まるか、俺に切られるか選べ」
剣を手に語気を強めてそう言うと、男たちは慌てて腰にさげていた剣を抜く。

