透き通るように白い肌は赤くなり、左頬だけが腫れ上がっていた。
腕には男に押さえつけられたであろう跡もついており、その力がどれほど強かったかが分かる。
そして、それを目の当たりにして、エレナの怯え様に納得した。
怯えの原因が分かった時、不思議と目の前の男への怒りよりも、エレナを優先させていた。
「エレナ」
自分でも驚くほど穏やかな声でエレナの名を呼ぶ。
するとエレナは俺の声に反応してビクッと体を震わせ、曇り空を映していた銀色の瞳に光が宿る。
我に返ったエレナは恐々と辺りを見回し、視線がぶつかった。
驚きに見開かれた銀色の瞳は相変わらず綺麗で、フッとこの場に似つかわしくない笑みを零せばその瞳が涙で歪められる。
「っ……ルバ……」
くしゃっと顔を歪ませてエレナが口にした言葉は上手く紡げていなかった。
「起きれるか?」
殊の外優しく声をかけた俺にエレナは小さく頷き、未だ震える体を抑える様にして上半身を起こした。
ローブは既に雨で濡れ、土まみれになっている。
このままでは雨に体力を奪われかねない。
エレナを一刻も早くフェルトのところへ連れて行かなければならないが、その前にこの男たちへの処分だ。

