下へと引っ張られる力のままに屈むと…―――
顔を赤らめたエレナが横を掠めたかと思えば、頬に温かな感触がした。
柔らかなものが押し当てられ、それはすぐに離れていった。
「い、今はこれでがまん」
真っ赤になって消え入りそうな小さな声でそう言うエレナに、頬に触れたのはエレナの唇だったということがやっと分かった。
途端、先ほどまで胸に巣食っていた負の感情が嘘のようにスッと引く。
たったこれだけの事でといわれてみれば俺も単純な男だと改めて思う。
ただエレナの気持ちが変わっていない、まだ繋ぎとめておけると思えただけで先ほどの弱気な想いは吹き飛んだ。
頭から湯気が出そうなほど真っ赤な顔をして俯くエレナの顎を持ち上げ、その赤く色づいた頬に唇を寄せた。
「シ、シルバ!?」
まさかお返しをされるとは思っていなかったエレナは焦る。
「風邪が治ったら覚悟しておけ」
真っ赤な顔をしたエレナに向かって不敵な笑みを浮かべた。
本当にエレナといると退屈しない。
エレナ相手では今まで持ち合わせていなかった感情が次々と押し寄せ、そのどれもが一筋縄では扱えない。
けれどそのどれもがエレナを愛するうえで欠かせない感情であり、一国の国王である前に一人の男なのだと再確認させられる。
しかし気づいた時には、時にうっとおしくも感じるそれらを受け入れている自分がいた。
おそらくこれからも同じような事で何度も振り回されるんだろうと思えば小さく笑うしかない。
それでもお前と共に歩みたいんだ、エレナ。
これからもずっと…――――
end...

