しかし、「ですが、シルバ」とくぎを刺すのを忘れない。
「エレナさんは病み上がりです。今無茶をさせたらそれこそお預けをくらうのは貴方の方ですよ」
確かに……ウィルの言うことは尤もだ。
俺を不安げに見上げるエレナの瞳は未だ潤んでおり、ほんのり上気した頬は恥ずかしさからくるものだけではない。
触れた首筋はいつもよりも熱く、額にはうっすらと汗が滲んでいる。
エレナの体調がまだ完全に戻りきっていないのは明らかだった。
「シルバ、ウィルの言うとおり私はまだ完全に治ったわけじゃないわ。貴方に風邪を移したくはないの」
終いには自分よりも俺の心配をされてしまっては手を上げるしかない。
「分かった」
高ぶった欲と負の感情を振り払うように深く溜息を吐き、エレナの体に回した腕を解く。
拘束を解かれたというのにエレナの表情はさえず、そればかりか不安げな銀色の瞳が俺を見上げた。
ドロドロとしたこの感情をエレナに知られたくはないが、エレナに気付かれてしまう程それは大きかったようだ。
自然とエレナの視線から逃げる様に床に視線を落とし、首裏にあてていた手も放す。
そして、その手を自分の方へゆっくりと戻していると、そっとエレナの手が俺の手に触れた。
ハッとして視線を戻せば、少し戸惑っている様な、けれど真摯な銀色の瞳と目が合う。
その瞳に魅入られ、ゆっくりと自分の方へ引くエレナの導きのままに引き寄せられる。

