「グリッドさん、ありがとうございます」
一通りのやりとりを見ていたエレナは何のことかわかっていないはずだがグリッドを呼び止めて礼を言う。
振り返ったグリッドは驚いた表情をした後、俺たちには一生見せないであろう柔らかな笑みを浮かべて応える。
「エレナ様、早くお風邪を治されませ」
そう言って、グリッドは部屋を出た。
それに続き、ノーラとブルームがグリッドの後を追う。
「エレナ様、中央へ戻られたらまた改めてご挨拶に伺いますね」
「えぇ、待ってるわ」
貴族らしく服の端を持って優雅に礼をしたノーラにエレナは嬉しそうに応える。
「その時は俺も行くからな」
「はい」
お前は来なくていい…とはエレナの笑顔の前では言えなかった。
そうして嵐のような一行は出ていった。
バタンと閉まった扉を嬉しそうな顔をして見つめているエレナにまたあの胸焼けが襲った。
「エレナ、何か俺に言うことはないか?」
「え?」
首を傾げて俺を見上げたエレナに黒い感情がこみ上げる。
「あのブルームとかいう男とえらく親しげだったじゃないか」
「えっと…ブルームさんはお友達です」
俺の想いなど知る由もないエレナははにかんだ様子で俺に笑いかける。

