「エレナ様」

ノック音の後に入ってきたのは昨日森でエレナと一緒だった女と男だった。



「ノーラさん!ブルームさん!」

エレナの呼びかけに、そういえばそんな名前だったなと思い返す。

二人は曇った表情をして部屋に入り、こちらへ歩み寄る。

しかし、エレナの前に立った二人は立ち尽くしたまま何も口にしない。

特にノーラは俯いたままちらちらと視線を泳がせる。

そわそわと落ち着かないノーラにしびれを切らしたブルームが口を開いた。





「エレナ、具合はどうだ?」

「今はだいぶ良いです」


親しげな呼び方にピクリと反応したものの、眉をしかめた俺にウィルが釘をさすように「シルバ」と諫められる。

エレナに関しては心が狭いのは重々承知だが、やはりエレナが他の男に笑みを向けるのは面白くない。

年甲斐もなく顔をしかめて二人に歩み寄るエレナの背を見つめた。




「熱に気づいてやれなくてすまなかったな」


全くだ、俺が傍にいればすぐに気づいてやれたのに、などと心の中で文句を浴びせる。

しかし、そんなことを気にするエレナではない。

きっと首を振って笑うに違いなかった。





「いいえ、私も自分では気づかなかったくらいですから気にしないでください」


思った通りエレナは微笑み、ブルームは「ありがとう」と言った。