「え、俺にもいいの?ありがとう。すっげー、嬉しいよ」


差し出した私のパウンドケーキを受け取り、柔らかく微笑む先輩。


…渡せてよかったな…。


楓先輩のその言葉だけで十分嬉しい。


紅葉くんにも渡せたしね…!


…これで、当初の目的は果たしたし…楓先輩のこともキッパリ諦めないと…だ。


少し寂しいけど、きっとこれは神様が私に与えてくれたチャンスだったんだと思う。


そう考えて曖昧な笑みを浮かべた時。 


「萌花お姉ちゃん…!ぼく次はチョコレートクッキーがいいな。ね、お兄ちゃん」


紅葉くんが、嬉しそうにそう声をあげた。


すると。


「こら、紅葉はすぐ調子にのるんだからったく……でも、来年も期待してもいいかな?」


ドキン


続けざまに、先輩の口からそんな言葉が飛び出すものだから思わず心臓が高鳴る。