「頭でわかっててもつい体が動いちゃうこととかもあると思うので、丸ごと慣れさせてから計画を実行しましょう、ということですね!瀧澤さんもちょうどそれくらいの期間をあけて今日に至ります」

「なるほど」



東先輩の為という気持ちの冷却期間に3週間、テスト期間に2週間、ちょうど1ヶ月と少しくらいだ。

その頃イベント事を起こすとすると、やはり夏休みとなる。



「そこで!」



にーっこりと笑った綾愛さんの笑みの、目元が少し開いて『にやり』に変わった瞬間、その視線が一直線にあたしを捉えていて嫌な予感に背筋がひんやりとする。

だってその顔、なにかを企んでいる時の東先輩の顔に……そっくりだから。



「その予定に、和歌さんの苦手とするプールへ行くことを、あえて提案します!」














肝が、冷えた。
















「異議あり!!!!!!!!!」



あたしは手を真っ直ぐピンと伸ばして、全力で主張した。



「お前まさか泳げない……?」

「異議!!!異議あります!!!!」

「和歌……カナヅチ……?」

「反論させてください!!!!」



綾愛さん以外全員に可哀想な瞳を向けられていても、和歌は抗議を止めません!!

なぜ綾愛さんがあえてあたしを貶めるかのような、そんな、そんな酷い計画を立てようとしているのか、和歌には全く分かりません。

きっとあたしよりずっと頭の出来のいいだろう綾愛さんの考えることならば、きっと理由が、それなりの理由があるかもしれない。



あるかもしれなくても!!!

和歌は!!断固として拒否を主張し続けます!!



「和歌さん、落ち着いてください」



うるうると、目の前が涙の膜でぼやけてくる視界の中で、綾愛さんの困ったような声が聞こえる。



「和歌さん、お兄ちゃんが遊園地や動物園、山や海なんて、遊べるところに誘ってすんなり付いて来てくれると思いますか?」

「……」



それは、確かに思えなかった。

彼はそんな付き合いのいい人ではない……と、思う。