「まぁ、私たちの把握している限りのログは彼の中に残っているので、もし何か知りたければ彼に聞いてください」
そう言って綾愛さんが手のひらを向けるのは、あたしの彼氏様でもある心くんであった。
記憶を全て覚えているという、彼の中。
「ログ扱い……」
「実在する証拠は残していないので、記録は全て個人の記憶の中と、彼の記憶に頼っています。目に見える情報は全て彼が管理しています、この場を含めて」
この場……つまり、心くんの家で廊下に監視カメラを置いた上で誰にも漏らさず話し合いが出来る場を管理しているのも、心くんということなんだろう。
「この件についての情報管理は綾愛さんではないんですね」
「私は記録したり情報収集には関わりますが、この件についてはその後全て破棄してしまうので、手元に残りません。身内なので一番ボロが出やすいですし」
「俺がいるからこそ出来る管理方法だな」
「ですです。負担はかけてしまいますけど」
「騒がしい場所に行くよりはマシな情報量だから大丈夫だっつってるだろ」
心くんは情報を受け取りすぎて普段から疲れてしまいやすい、それは綾愛さんも知っているようで。
少し負担をかけてしまっていることは認識しているようだ。
綾愛さんと話していた心くんの瞳が、ふとこちらを流し見て妖艶に目を細める。
まともに目を合わせてしまい、ドクリと心臓が跳ねた。
「まぁ疲れた分は後で癒してもらうから問題ない」
「そう言ってあたしをガン見するということは、あたしに癒せと言うことでしょうかね?」
「それ以外に癒しなんてあるか?」
「……ッ、趣味とか、なんか好きなものとか」
「和歌」
「……」
「それ以外に癒しなんてねぇ」
「……」
もう嫌この人、なんで恥ずかしげもなくそういうこと人前で言えちゃうの!?
あたしは恥ずかしさで机の上に顔をつっ伏す。
わざわざ含みを持たせて言うことないじゃないか、心臓に悪い。
「和歌も大変だね」
「へるぷみー灯くん」
「ごめんね?」
却下された……。



