いや、きっとそれが悪影響になるとこの場にいる人達は気付いていて、だからこそこうやって話し合いを続けて来たんだろう。
彼に嫌われる覚悟も、傷付けられる覚悟も持った上で、それでも彼を救いたいと……少しでも、楽にさせてあげたいと、この場にいる誰もがきっと、そう思って動いている。
あたしも、彼の苦しみを知って彼自身を素直に出せるようになってほしい、そう思う。
計画の説明をしてくれている綾愛さんがきっと、この場で一番強くそう願っているんだろう。
「お兄ちゃんのフレンドリーさを利用して、困った時に頼ってる風に、接触人数を増やして行きたい次第です!」
そう両手を合わせてにっこりと笑いかける綾愛さんに、残念ながら抱く疑問が浮かんでしまうけれど。
「フレンドリー……?でも東先輩が面倒見がいいと言われてもピンとは来ませんが、奏多くんへの態度を見ていると確かに……?」
奏多くんへの面倒みの良さは、なんとなくわかる。
しかし残念ながら、あたしは彼からフレンドリーさの欠片も受けた覚えがないのだ。
「和歌さんの面倒も結構みてますよ?」
「なん、だと……?」
「悪口以外でもお話することありませんか?」
「……確かになにかの説明をしてくれるのはいつも彼です、けど」
うん、確かに、悪い人では無いのだ。
説明とかアドバイスとか、傷の心配までも彼は確かにしてくれている。
ただそれを上回る口の悪さと支配的な行動で完全に隠れてしまっているだけなのだ……たぶん、きっと。
「まぁお口が悪いのでわかりにくいですよねぇ」
「悟先輩はちょっと……ほら、ちょっと厳しくなっただけだから……ね」
「目が泳いでるよ、残念ながらフォロー出来てないよ灯くん……」
残念ながらもう彼は厳しいの範疇を越えているのだよ、灯くん。



