「というのが出会いの裏エピソードでした!滝澤さんはその後加入したてほやほやですー!」
綾愛さんが灯くんに向かって手をキラキラとジェスチャーしている。
いちいち動きが可愛いな、綾愛さん。
「灯くんて、最近この集まりに入ったの?」
「和歌が奏多の昔の話聞いた後くらいにね」
というと、あのデートの日の後のようだ、まだ1ヶ月も経っていない。
「悟が、教室で和歌呼ぶのに、灯にお願いしてるから……大丈夫かと思って」
「それまでは接触を避けられているように見えてたので、引き入れなかったんですよ。あくまでお兄ちゃんから接触出来る相手のみ、集めています」
「そういうことですか」
全体的な方針はなんとなく掴めたような気がする。
あくまで、東先輩が自分から動くことを促し、自分から接触出来た人の範囲内で変わって行けるサポートをしているようだ。
綾愛さんの表情がパッとにこやかになり、なにかを思い出すようにふふっと笑う。
「あぁ見えて面倒見がいいので、自分から話しかけられる相手なら自然と面倒見始めると思ってこういう形になりました!元はとてもフレンドリーだったので」
そう話す綾愛さんは、本当にお兄ちゃん好きなんだなぁというのが滲み出ていて……綾愛さんにも触れることがなくなったという東先輩に、少し胸が痛む。
こんなにも、好きでいてくれている人がいるのに。
仲の良さそうな、兄妹、なのに……。
あたしがもし、急に知歌から避けられるようになったら……ついそう重ねて考えてしまうと、胸が苦しくなる。
でもきっと、それ以上に苦しんでいるのは、東先輩自身なのだろう。
彼はまだ、ずっと過去に捕らわれているまま、自分の身をガチガチに固めて守っている。
誰も心の底から信じることも出来ず、誰にも自分を出せず、常に疑心暗鬼で……疲れてしまわないのだろうか?



