「まぁそこは大丈夫です。茅ヶ崎さんと滝澤さんは来れそうなら来るそうです」
「灯くんまで……」
「出来るだけ最小限の人数で、本人の意思を尊重したうえで『ごく自然に』流れを促すという形で動いていますので。お友達には話さないようにお願いしたいのですが」
「あの神経尖らせて常に警戒心ビリビリさせてる東先輩に対して、『ごく自然に』って……それバレた時が相当危なそうな予感がするんですが」
「お察しの通り、全員縁を切られる覚悟の上で動いています」
そこまでして東先輩に変化をもたらしたいこと……というと、まぁ、あたしの知っている中ではあれしかない。
『信用問題』関係のこと、じゃないだろうか。
一時期あたしも少し触れた件だ。
「ええと、知歌にも説明……していいのかな?」
「あぁ、知歌さんならいいですよ。彼はある程度信頼できます」
「……綾愛さんもしかして知歌のことまで知っていました?」
「もちろんですぅー!」
にっこりしているその笑顔が怖い!!
まぁあたしのことを知っていたんだから、知歌のことも知ってるんだろう、ね……いや本来知ってるはずもないことなはずなんだけど。
「ということで、よろしくお願いしますねぇー!」
そう言われ、くるりと回れ右をさせられ、軽く押される。
戻れということか。
振り向くと、手を振っている綾愛さん。
あたしはこの片手に持ったプレゼントを早く渡したくて、席へと戻る道を歩んだ。
少しの時間離れていたそこは、暗がりの中、蝋に火が灯され、揺らめいていた。
すっかり暗くなった空の下、揺れるオレンジの炎が各机の上に置かれている。
「きれい……」
その光景に見惚れていると、静かに立ち上がった心くんがゆっくりとこちらに来る。
綾愛さんにさっき提案された件を思い出して、少し意識してしまう……。
「和歌……?」
「あ、えっと……綺麗だね、蝋燭?」
「あぁ、少しの時間だけな。もうすぐ解散する。……綾愛の所行ってきたのか?」
さすが、バレていたご様子。



