彼もなかなかに意地悪な表情ばかりで自然な笑顔を見せてくれないもんだから、なんというか……これがギャップ萌えという奴だろうか。
というかピコハン使ったかどうかすらも聞かないとわからないって、本当にちょっとの刺激じゃ気付かないの自覚あるんですね!!?
じゃあこの二人がいなかった頃は一体どうやって生活していたのだろうか?と過去の心くんにも興味がわいてしまう、がしかし。
それよりも先に気になることがある。
「ていうかなんで奏多くんはピコハン使うことになってんですか?」
この家に出入りする誰にも似合わないのだ。
このピコハンを使うような、ヤンチャなキャラがいないのだ。
心くんに至ってはもはやヤンチャの域を越えて素手で殴りかかりそうだ。
一体なぜピコハンなのか、誰がそんなことを思いついたのか、和歌の目先の疑問はそれ一色である。
「あー、どっから話すか?」
心くんが困ったように視線を東先輩に向けるが、彼は未だに頭を抱えたまま動かないのだ。
本当に東先輩何してんの?
「……最初、悟が、起こしてた、んだけど……」
ぽつぽつと、思い出すように説明を始めてくれる奏多くん。
「あぁ、最初の頃蹴られてたんだよな。まだ奏多とつるんでなかった頃か」
「そう。それで、心が怪我しちゃうから、変えようって」
確かに、加減をしなさそうな東先輩だ、怒りのままに蹴られていたらボロボロにされそう……。
イメージするだけで怖いわ、絶対嫌だ。
「でも奏多だと優しすぎて気付けないから、結局悟に蹴られてな」
「揺らしたり……肩をぽんぽん、てしたり、目隠ししたり、したんだけど……」
何それただただかわいい。
あたしもされたい、奏多くんに目隠しされて『だーれだっ』ってされたい。
いかん、にやにやしてしまう。
「邪魔だと思うと振り払っちまうから、奏多も使えて俺も痛くない程度の何かはないか?って」
そうか、それでハンマーではあるけど、痛みのないピコピコハンマーを――
「ドンキ行って見つけてきた」
ド ン キ な ん だ



