「……ただいまぁ」



そう元気のなさそうな声が微かに聞こえて、俺は思わず布団から起き上がった。

和歌……どうしたんだろう。

出て行きたくても、親から布団から出るの禁止って言われているから、出られない。

早くきて、和歌……。



そう願っていると、部屋の扉がゆっくりと開かれた。



「和歌!」

「……知歌」

「どうしたの?なにかあったの?プールでなにか言われた?」



そう俺は聞くけど、和歌は俺を見ていなかった。

俺に視線を向けているはずなのに、俺を見ていなかったんだ。



そんな和歌を初めて見た。



「和歌……?」


明らかになにかあったのに、落ち込んでいるのとは少し違う。

ぼーっとしている感じ。

ぼーっと何かを思い出しているような……。



「……知歌」

「な、なに?なんでも言って」

「……あたし、家出少年に会ってきた」














わけがわからなかった。



「……い、えで?」

「家出。お稽古さぼって、おっきなリュックかかえて、公園にいたの」



和歌は何かの夢でも見たのだろうか?

初めはそう思った。