「なんで来たくなかった?」
「会うかもしれないじゃないですか、ここで」
「お前らクラス一緒だろ、毎日顔合わせて──」
「じゃあ奏多くんに会う顔がなかったから」
緒方先輩に会いにくかった。
そう本音を口にしてしまうと、何かが変わりそうで、何かが怖かった。
なぜそんな感情を緒方先輩にむけているのか、向ける必要があるのか。
知りたくなかった。
気付きたくなかった。
「返事どうした?」
「……保留」
「……一週間まってやったろ、戻ってこい」
「盗み聞きしてた人のところになんて戻りたくないです」
そういえば、ナイショだと約束したな、灯くんと。
殺されるからナイショって。
誰に殺されるのかは不明……だと思う。
でもその殺しそうな人に心当たりはある。
殺すような理由が見当たらないけれど。
「戻って来ないなら滝澤抹殺する」
「ただいま戻りました」
ほら、ね、目の前にいたよ、ほら。
もはや脅しだけれど。



