もうなに考えてんのかわかんない、この人。
あたしはもう片方の手を額に当ててうなだれた。
呆れたのポーズ。
「緒方先輩、やめ──」
「告られたろ」
思わず、言葉を飲み込む。
いきなり本題に入られたようで、驚いて頭の中が真っ白になる。
というか、なぜ緒方先輩がそれを……。
「滝澤に」
「なんで知ってるんですか」
「見てた」
──この時、あたしの心はショックを受けた。
『知られたくなかった』と。
なぜだかこの人だけには知られたくなかった。
東先輩にも、奏多くんにも、バレてもそれはそれで大丈夫だと思う。
もう知られてるとしても、あぁそうなんだと流せる。
でもなぜだか、緒方先輩には知られたくなかった。
知らない感情に戸惑う。
なにこの気持ち。
意味わかんない。
「おい」
「そうです。だからここに来たくなかったんです」
知られたくなかった、でももう遅い。
知られてしまっているのだから。
なかばヤケになってそう言い捨てた。



