彼が何を考えているのか、全くわからない。
相変わらず一週間前と変わらず乱暴だし、まさか肩に担がれてここ……緒方先輩の教室まで来るとは思わなかった。
この人あたしを女だと思っていないだろう。
あぁスカートがちゃんと役目を果たしているのか不安でしょうがない、って授業中サボって廊下歩く人なんてそうそういないか……なんて心配もしてたなぁ。
「緒方先輩、帰りたいんですけど」
「帰すか馬歌」
「また名前文字ったし……それやめてくださいよ。東先輩にまで言われて傷付いたんですから」
「あ?悟だったら鹿の方だろ」
馬鹿の方ですか。
あたしは激しく傷付いた。
立ち直れる気がしない。
ぎゅっぎゅっぎゅっ。
いきなり緒方先輩は何を思ったのか、あたしの手首を揉み始めた。
ぎゅっぎゅっ。
うどんですか、パンですか。
そんなにやーらかいっすか、あたしの手は。
ふてくされながら思う。
……プニプニ?
なにプニプニしてんのこの人。
と思ったら指先まで下がってきた。
ぬくいな、緒方先輩の手。
……ひっくり返されて手のひらを上にされて、指同士を絡めてきた。
「……なにしてんですか」
「あ?」
あたしはいつの間にか、人生初の『コイビト繋ぎ』とやらをされていた。



