そういえば、朝知歌に言われた。
『和歌、なんちゃら先輩忘れてそのまま行くなよ?』
母に言われた。
『あぁ、もう、そういうことはほどほどにしておきなさいね』
そしていま。
思い出したくもないことを、思い出してしまったのだ。
なぜ忘れていたのか。
別のことを考えすぎて忘れていた。
「コンシーラー先輩!」
バッと、首を手のひらで押さえた。
「は?」
「チッ」
言わずもがな舌打ちは緒方先輩である。
理由なんて今のあたしにはどうでもいい。
大変だ、コンシーラー先輩してくるのを忘れてきた。
つまりあの、……き、きすまーくを、隠してくるのを忘れたわけで。
つまり、見られたい放題なわけで。
あたしは首を押さえたまま床にしゃがみこんだ。
恥ずかしい……!
朝から丸見えだったのか!
教室に顔は出してないからいいものの、すれ違う人には見られてたかもしれない。
恥ずかしすぎて死ぬ!
見ただけでいらぬ妄想なんかされたらもう……!!



