だって、なに、その取り引きみたいな感じの会話。
緒方先輩が妥協した、みたいな。
「それでも、信じてなくても口に出すなって言っただろ」
「口に出さなきゃ、線引けない」
線を引いている。
気のせいじゃなかったんだ。
どこか冷たい目をいつも向けていた。
距離がある、何となく感じていた。
でもそれは、本人が意図して深い関わりは避けていたんだ。
「東先輩」
「……なに?」
「信じてもらえなかったんですか」
──あたしが踏んだ地雷は、身を滅ぼすものか。
それとも、彼を知るために必要だった犠牲なのか。
ガツッ……東先輩が蹴りつけた机。
彼のスイッチが、カチリと切り替わる。
「……黙れクソ女」
──その時、本当の東先輩の心が、表れたんだと思う。
「お前何様?なに信じてもらえなかったのかって。何気取り?──」
フツッ──音が抑え込まれた。
気付けば緒方先輩があたしの耳を塞いでいる。
きっと今、相当酷いことを言われているんだろう。
緒方先輩の方が……苦しそうだ。



