その言葉は、本当にあたしに対して言っているの……?
だって。
「悟」
あたしは、そんなつもりはなかったのに。
緒方先輩が呼びかけて牽制する。
それでも。
「何したのか知らないけど、俺はそんなに簡単に騙されないから。奏多は単純だけど──」
「悟黙れ」
「……。心だって。あの頃と今じゃ変わらないはずないでしょ。いつまでもお前のおもってた女のままなわけない」
「黙れっつってんだ!」
緒方先輩が、少し大きな声を出した。
びくっ、体が緊張する。
あたしに向けられたものじゃないのに、恐怖で指先が震える。
「人は変わるんだよ。いつ裏切られるかわからない。だから俺が、俺だけでも信じない。心すらも」
『心すらも』
東先輩は、緒方先輩すらも、信じない……?
「それでもいいって言ったのは、心でしょ?」
緒方先輩は、東先輩の救世主、のような話は聞いていたけれど、実際はもしかして……まだ救われたわけじゃないのかもしれない。



