二人で、口を閉じたまま歩いた。
静かな夕空に一つだけ、星を見つけた。
それがなんだか切なくて、手をギュッと握り締めた。
ギュッと、奏多くんも、握り返してくれた。
気付いたらなぜかすでに、緒方先輩の家の前にいた。
あれ、なんでだろう?
来るつもりはなかったはずなのに。
どうやら、ぼけーっとしている間に、奏多くんに連れられて来てしまっていたらしい。
ほんと、いつの間にだ。
「か、奏多くん、じゃ、あたし帰るから、ね」
そう言って手を離そうとしたけれど……離れない。
ガッチリホールドされている、あたしのおてて。
「奏多くん……?」
キンコーン、いい音が響いた。
奏多くんを見ると、チャイムの♪ボタンに指を乗せていた。
呼び鈴の音……だと?
ガチャ
数秒でインターホンに出た音の後、聞こえたのは東先輩の声。
「奏多?」
「そう」
がちゃ、施錠が外れる音。
「はやくおいで」



