灯くんは奏多くんの家と近いらしく、そのまま帰った。
あたしたちは家の方向に自然と足を進めていた。
「ねぇ、奏多くん」
「なに?」
「今日、ちょっとデートっぽくなかったよね」
あたしは苦笑いで奏多くんに顔を向けた。
奏多くんも、少し困った顔。
「また、行けばいいよ」
まっすぐ前を向いて、奏多くんは言った。
また……行く?
「それって……デートに?」
コク、薄暗い中、頷く奏多くんが見えた。
ふわりと片手を持ち上げられ、重なる手。
奏多くんが、あたしの手を握り締め、再び降ろす。
その手は、繋がったまま。
「デート、いつでもできるから」
トクン……心臓が跳ねた。
なにそれ、なにこれ。
奏多くんが……男の子みたい。
いや、男の子なんだけど、今まで男の子っぽくなかったから意識しなかったけど。
急に顔に集まる熱。
無性に恥ずかしい気持ちがこみ上げてきた。
ぎゅっと握る、優しくて、でも力強い手。
まっすぐ前を見つめる横顔は、どことなく格好良く見える。
──奏多くんは、男の子だ。



