ポカーンと見ているしか出来なかった。
一瞬で今の状況が逆転した。
そんなことが、あり得た。
「おい」
びくっ
無意識に跳ねる体。
助けてもらった、のに。
「……。お前次の時間休め。まず落ち着け、それから話聞く」
緒方心が床に胡座をかいて座る。
口を開くけど、声がうまく出ない。
クチパクみたいになる。
「リラックスしろよ。俺はおまえに何もしない。お前の味方になる」
返事を、したいのに。
ありがとうって、言いたいのに。
こくり、頷くのが精一杯だなんて、情けない。
「お前に選択権をやろうと思うんだ。俺らに関わるか、関わらないか」
こくり。
「関わるなら、今の環境から確実に切り離されて、俺らと同じように恐怖の対象になる。バックに俺らがつくってことだからな」
「……」
「注目を浴びたくないとか、今のままでいいと思うなら、さっきのことはなかったことにする。俺と関わらない。今までのままだ」