「あ、泣く?また泣いちゃう?」
「コイツ泣くしか能ねぇもんな」
「その辺の女以上に泣くぜこいつ」
「泣きゃ済むと思ってんじゃねーの?」
「それならいい加減無駄だって学習すんだろ」
「おこちゃまだから学習出来ないんだよなー?」
「写メって蒔くか」
ひとりが僕の手首を掴む。
反射的にビクッと肩が上がって硬直する。
慣れたはずなのに。
こんなの、ずっとずっといままでずっとされ続けてきて、慣れたはずなのに。
慣れれば慣れるほど、恐怖が僕を襲う。
怖い。
怖い。
さわるな。
もうやめて。
「びくっだって。びくっ」
「くくっ、ホント奏多ちゃんはあきねーよなぁ」
笑い声が不快だ。
「さぁーてと。そろそろ金巻き上げようぜ。今月分」
「それがさぁ、なんかこれでも学習したみてーで500円ぽっちしかねーんだけど。カード系もねぇし」
「あ?鞄中隠し持ってたりしねーの?」
三人が僕を囲んで、二人が僕の鞄を漁っている。
数ヶ月前から始まったことだ。



