名乗らずに、別れなくて良かった。 ……俺、この子と、もっと近づきたいって そう、思うんだ。 俺の名前を知っていて欲しい。 その時……。 「え?」 可愛らしいピンクのくちびるが小さく動いた。 …ふ。 …ゆ。 …き。 俺の、名前だった。 不思議な感覚がした。 なにか特別な言葉に聞こえたから。 ただの、俺の名前なのに。