でも、そんなこと出来るはずもなくて。 俺は静かに彼女の手を離した。 「…なんで逃げんの?」 カッコ悪いな、俺。 ちょっと走っただけなのに息切れてんじゃん…。 額に汗が滲む。 雨の音がザーザー聞こえてくる。 ……聞いても話せないか。 ノートもないもんな、今。 でも、なんで睨まれてんの、俺。 好きな子から向けられて気持ちのいい眼差しではない。