俺は割と真剣に言ったつもりなのに、それを聞いた相沢は無言の大爆笑。
なんだよ〜。
「笑いすぎっ」
おでこを人差し指でツンと突っぱねる。
それでも笑う相沢がノートを取り出して『うれしくて笑ってるんだよ。心の中で冬樹って何回も叫んでたから。伝わってうれしいの』って。
本当に嬉しそうに笑う相沢にグッと心を掴まれる。
なんだか照れ臭くてむず痒い。
俺もそれがすごく嬉しくて、嬉しくて。
「行こう」
『うんっ』
恥ずかしいとは少し違ったよくわからない心をくすぶるような感情を隠すように、ちょっとだけ彼女から視線を外して歩き出した。
……あー、なんか……やばい。
胸が苦しくて、でも愛しくて、手放したくない幸せな痛み。
いつもの通学路が、隣に相沢がいるだけで景色を変える。
相沢がいる右側に神経が行って緊張。
……まだ慣れない。
相沢と笑い合っていること。
出会った頃は距離を置かれていたから。
それは仁との約束があったからなんだって、今ならわかる。
歩み寄ることをやめなくて良かった。
遠かった。
走っても、走っても、相沢には追いつけないって思った。