間に合わなかったんだ……。


あんなに必死に走って行ったのに。


でもあの日見たあの子は、きっと優花ちゃんで間違いないと思う。


いつかまた、仁と巡り会えますように。


俺は願うことしかできない。



「…………」



学校の近くの道になってくると、同じ学校の制服を着た生徒たちが増えて来る。


見慣れた景色の中を、何も考えずに歩いていた。


木々たちが風に揺れる。


風が気持ちいいなぁ。



ーー『ふゆき』



その時だった。
不意に俺を呼ぶ声が聞こえた気がして、立ち止まる。


え?今の、って……?


パタパタと後ろから近づいて来る足音。
ドキドキしながら身体を180度回転させると、相沢が笑顔でこちらに駆け寄って来ていた。


……今、確かに聞こえた。

相沢が俺を呼ぶ声。


もしかして、相沢、声が……?



『おはよう』



……あ、あれ?


しかし近くに来た相沢はいつもと変わらず口パクのままだった。


……気の、せいか。


俺を呼んだ気がしただけ?



「今、相沢が俺を呼ぶ声が聞こえたんだ」


『え?』


「テレパシー?」