「でも菜摘、まともな恋愛してるんでしょ?」

趣味は盗み聞きの隆志がタイミング良く現れる。

なんだかもう気にならない。

「まともなの?大輔、彼女いるんだよ?」

そんなの『まともな恋愛』って言うのかな。

ペンを置き、窓際に立つ隆志を2人で見上げる。

「まともな恋愛って、別に両想いのことだけじゃないじゃん。菜摘はマジに好きなんだろ?」

改めて言われると、ちょっと恥ずかしい。

控え目に小さく頷いた。

「それってすごいことじゃん。それは『まともな恋愛』だと思うなあ」

確かに、好きでもない人と付き合ったり別れたり─

そんな今までの中途半端な菜摘よりはずっとまともかもしれない。

『この人が好き』だと胸を張って言える、それはもしかしたらすごいことなのかな。

「…ありがと」

「あら、ありがとうだなんて菜摘ちゃん、ちょっと大人になったんじゃないの?」

せっかく素直になった菜摘をバカにする隆志に蹴りをいれる。

いつか─

照れず素直に『ありがとう』って言える人間になりたい。

それはとても大切なことだから。