「…まあ、俺が言うことじゃないかもしんねぇけど」

そんな寂しいこと言わないで。

本当に嬉しいから。

「これ以上ひどくなったら、お前ヤキ入れそうだもんな」

「松ちゃんうっせぇよ」

2人のやりとりを見ていると、自然と笑みがこぼれていた。



みんな、本当にありがとう。

でもね─

菜摘はそんなにいい子じゃない。

自分の汚さを知られたくないだけ。



「せっかくのクリスマスなのにごめんね。…みんな、ありがとう」

─『ありがとう』─

恥ずかしさを紛らわすため、ドアを閉める。

「またね」

窓越しに聞こえた一言。

「うん。またね」



もう限界だ、何もかも。

菜摘も亮介も。

ずっと前からわかってたはずなのに。

亮介だけじゃない。

みんなを巻き込んで、みんなを裏切ってることに。

もう遅いのはわかってる。

いい加減、全部終わりにしなきゃいけない。



大ちゃんのことを諦めるなんて

大ちゃんへの気持ちから逃げるなんて

菜摘は無理だって、痛いほどよくわかったから。