「ちゃんとご褒美あげるからさ。特別に俺もサボってやるから、存分に泣きなさい」



抱きついて、胸に顔を埋めて、可愛く泣くことなんてできなかったけど─

大ちゃんのちょっと汗臭いジャージを着せられて、わんわん泣いた。



「お前のおかげで開会式も閉会式もサボっちゃったよ」

「…菜摘悪くないもん」

「別にいいよ、どっちにしろサボるつもりだったし」

「ありがと」

「よしよし。いい子いい子」

大ちゃんは─

手を握って、ずっと隣にいてくれた。

時折、菜摘の頭を撫でながら。



【準優勝、3E──】

外からものすごい歓声が聞こえる。

「準優勝だってさ。おめでと」

「優勝じゃねーのかよ。まあいいや」

本当、あのリレーで大逆転優勝──なんてなったら

めちゃくちゃかっこよかったのにね。



女子の優勝は、3年生の1番目立ってるクラスで

菜摘のクラスが呼ばれることはなかった。

悔しいけどいいんだ。



だって大ちゃんは、ちゃんとご褒美をくれたから。

汚い字で『数学☆山岸大輔』って書いてある、2ページしか使っていないノート。