――――コンコンッ


「はい」


カチャッ――――


「………沢田、次の予定は何だったっけ?」


一息入れる為に珈琲がそろそろ届く時間。


俺は目を瞑ったまま、首と肩の凝りを解し始めた。


香ばしい珈琲の香りが仄かに漂い、


コトッとソーサーが置かれる音が耳に届く。


椅子の背もたれに身体を預け、


再び大きく伸びをすると―――――。


「……かっ………なめ」


耳に届いた声色は聞き慣れた沢田の声でなく、


胸が熱く焦がれる最愛の女性のモノ。


俺は一瞬で我に返り、パッと瞼を開けた。


「杏花っ!!」


フフフッと柔らかい笑みを浮かべた彼女と


自然と絡まり合う視線。


思わず、目頭がカーッと熱くなった。


彼女は斗賀を抱きながら、俺の真横に立っていた。


俺はすぐさま立ち上がり、


斗賀を包み込むようにして彼女を抱き締めた。


「要、おかえり」


「ん…………ただいま」


久しぶりの彼女のぬくもり。


温かくて心地良くて、何とも言えない倖せの抱擁感。


彼女から斗賀を受取ると、頬を赤く染めながら


彼女は背伸びをして俺の首に腕を絡めた。