「今日からお世話になります、一条杏花と申します。どうぞ、宜しくお願い致します」


「講師の長谷川 忍と申します。こちらこそ、宜しくお願い致します」


私はとあるビルのレッスンスタジオに来ている。


先日、小夜さんに相談した所、


淑女レッスンを受けたらいいとの事。


国際人としての美しい所作や立ち振る舞い、


テーブルマナーは勿論の事、


ウォーキングやパーティー主催企画のマナーに至るまで。


通常は1日2時間程度のレッスンを週1回で2カ月ほど。


けれど、私には時間が無い。


3週間後には『一条 要の妻』として、公の場に立つ。


だから、今日から短期集中で受講する事に。


10時から16時までの6時間ビッシリと。


昼食はテーブルマナーを学ぶ為、


その1時間でさえ、レッスンに費やされる。


どこぞの令嬢と違い、私には土台が無い。


一から基礎を学んで、


エレガンスな女性にならなければならない。


だから、付け焼刃かもしれないけど


無駄口は叩いてはいられない。


今は出来る限りの事を全力でしないと。