颯太君が何か言いかけたのは分かった。


でもそれに気が付かなかったフリをして、私は体育館の外へと続く扉に向かった。


……無理かもしれない。


今の私は、いつもより弱ってる。


もし河本さんを見てしまったら、きっと颯太君を遠くから見るのに逆戻りだ。


「どうした、宮園!」


先生の言葉に、私は精一杯、明るい女の子になってみせる。


「すみませんっ! 具合悪いので、保健室行きますっ!」


……いや、これは体育系女子というより男子か?


そう思いながら、私は体育館を出て行った。