俯いて黙っていると、隣のコートが急に騒がしくなった。 「大丈夫か!? 賀沢ッ!」 その声に私は弾かれるように顔を上げた。 颯太君は足を擦りむいたようで、膝に血がにじんでる。 ……絆創膏! 私は自分が持っていた絆創膏を持って、駆け寄ろうとした。 その時、 私の隣を、誰かがスッと通り駆けてゆく。 「だ、大丈夫ですか? あの、これ……」 自分の真っ白なハンカチを、膝に惜し気も無く押し付ける河本さん。