何かを言うつもりだったのか、わたしの方を見て口を開いたけど…… 「――…………やっぱ、いい」 そう言い残して、背を向けてしまった。 いつも「来るなよ」って返されてたけど、今日は何も言われなかった。 少し近づけた気がして、嬉しくなる。 嬉しくてたまらない。頬がだらしなく緩む。 「じゃーねーっ!」 私は颯太君の背中に大声で言って、手を振った。 颯太君はギョッとしたようにこっちを見て、口元に人差し指を近づける。 口が『静かにしろ』と動いているのに気が付く。