たった一つのお願い



『春陽には暫く会わないでもらいたい』




――そう、昨日告げられた言葉が幾度となく頭をよぎり、反芻する。


俺はその時動揺し過ぎていて、上手く言葉に出来なかった。



何かを話せば、何かが俺の中で崩れそうだった。



あの時春陽のお父さんは俺に言ったんだ。




『――娘はすでに不治の病を抱えています』




そう、ハッキリと。
そしてだから近づくなと。



俺は頭を冷やし思考したがやはり結果は同じだった。



春陽とは別れない。
何があっても傍に居る。




『娘の余命はあと5ヶ月なんだ』




5ヶ月だって俺には必要な時間なんだ。


やはり俺は春陽を離したくはない。