たった一つのお願い



「わぁー!?理央先生!?ノックは!?」




いつもの彼女なら、こんな事を気にする人ではない。


だけど、今日は違った。



―――彼女が泣いていた。




「……どうした?」




何度もしたシチュエーションとは予想もしていない状況なので、俺はその言葉を紡ぐ事で精一杯だった。




「……ううん。ちょっと目薬さしただけ」




嘘がすこぶる下手なんだな。
だけど、今日は俺に“聞かない”という選択肢は無い。


俺の告白を、そんな不安定なままで聞かせられるわけがない。




「俺にも言えない事か?」



「……違うよ……自分の気持ちを整理したいだけ…」




そう、目をふしげがちに言う彼女はどこか悲しげだ。


――この顔は、反則だ。


意味もなく俺の胸が締め付けられるから。